鉄のまち、室蘭で垣間見る


私のこれまでの暮らしの中で「二次産業」という風景が心に飛び込んできたのは、昨日の夜が初めてだったのでは、と改めて思い返した。


夕暮れをとうに過ぎ、あとは太陽の光がすべて消えるのを待つつかの間。
目の前に飛び込んできたのは製鉄所の地上数十メートルもある巨大な煙突から吹き出る大きな炎だった。
こんなまちの風景をみたのは初めてだったし、何よりも、道路からふと見えたことがこんな驚きをもたらしたのだとも思う。
たとえて言えば、京都のまちを歩くように何気なくふと見上げた前方に五重の塔だとか重要文化財級の建物と出会うときのような暮らしとの近さを感じるものと言えばいいだろうか???



室蘭といえば古くから鉄の町として栄えている。そして、室蘭の「やきとり」も有名だ。
このやきとり、味の濃いやきとりを好む工場の働き手たちに支持されて育まれてきた食文化というから溶鉱炉が少しづつ閉鎖されていくも、そのまちの要素を形づくるには十分な影響力をもっているもの。


老朽化した産業遺構的なあの巨大な製鉄所の姿は、日本が工業国として栄えてきた歴史を知らしめるにはあまりにも十分な威光を放っていた。



折りしもいま、地域再生が市場主義にもとづくものと、そうでないものが同時並行で議論され、試行錯誤の取り組みが現場で行われている最中にある。
20年、30年後、はたまた数年後の答えは、私たち一人ひとりの心の中と行動の如何にある。